【かおかぼ】のブログ

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理論とはなにか~研究開発者(技術者)が最低限知る必要がある話~

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自分の上司との議論・・・にもなっていないのだが、衝撃を受けてしまったので記述しようと思った次第だ。

 

会話を抽象化して以下に記述する。

上司「いままでの傾向と違う結果になってるけど、お前がまとめた考察違うんじゃないの?(実際にはもっとむかつく言い方で言われている)」

私「それはそうですよ、だって、いままでAでやってきたのがBになっているんですから。あの考察(説明と定式化)はAという限定条件下で成り立つようにしたものですから」

上司「(意味不明なことを述べていた)」

私「帰納法でやっていて、前提条件が違ったら(考察と)異なる結果が出て当たり前ですよ!(そもそも前提条件が違うのだから、異なって当たり前であるが)」

上司「帰納法ってなに?」

私「・・・・・(絶句)」

 

・・・・・・・・嘘のようなホントの話である。これが企業で研究開発を20年近くやっている人間なのだから驚きで胸がいっぱいだ(以前のデータ不正の記事のときに述べた捏造上司とは違う人間である)。

 

絶対に知る必要がある2つの方法論

世の中には研究開発を進めるうえで、いろいろな方法論がある。アイデア発想法だけで、十個以上のものが存在し、問題解決法や実験計画法などもある。またそれらのセミナーも1回参加するだけで数十万は軽くするし、それに対する効果は実際に受けた社内の人を見ると・・・未知数・・・である。

しかし、研究開発業務を行う上で必ず知る必要があると私が考える方法論が2つある。それは帰納法と演繹法である。

 

帰納法と演繹法とは

帰納法と演繹法を繰り返すことによってあらゆる分野の科学が発展している。そのプロセスは下記に示す順番で行われている。

  1. ある事象を観察(実験などを行い)し、その観察した事象を何がどのようになっているかをうまく説明する(この状態のとき、推論や理論と呼ばれる)→帰納法
  2. その事象があっているかどうかの追加検証やその理論であらゆる現象を説明しようとする→演繹法
  3. ①で作った推論が②を行っている最中にどうしてもつじつまが合わないという事象が観察されたので②で発見・観察された事象も過不足なく説明できるようにした→帰納法
  4. ②と同様に行う→演繹法

このようにして、科学は発展していったのだ。上の説明ではわかりずらいと思うので偉大なニュートンで具体例を2つほど上げる。

 

  1. ニュートンはニュートン以前にあったあらゆる力学について、うまく説明ができるようにした→帰納法:ニュートン力学の誕生
  2. あらゆる現象をニュートン力学で説明しようと実験、観察を行った→演繹法
  3. ニュートン力学で説明できない事象が見つかる。例えば、量子はニュートン力学に従わない→量子力学の創設、天体観測において、ニュートン力学を駆使しても数度の位置ずれが発生して、それが説明できない→アインシュタインの相対性理論により、そのずれが説明できるようになった。→帰納法
  4. 量子力学、相対性理論が正しいかどうかの検証や立証中→演繹法

 

以上のようになっている。このことから、技術者が研究開発で実験を行い、そのデータがどのようになっているのかを説明するときには、今ある理論を駆使してうまく説明しようとしなければならないことがわかるだろう。決して、結果をグラフにしてAを変えるとBは右肩上がりになる・・・などで考察(にもなっていない)が終わってはいけない。多くの人が知っているニュートンの例で示したが、上記の例はニュートンが考えた基礎理論であり、その適用範囲はとてつもなく広いが、それでも量子では成り立たない。つまり、[ある限定条件で成立する]理論であると言い換えることができる。これを日常で考えると、我々が実験したデータを過不足なく説明しようとするとき、○○という限定条件下においてのみ成立するとして、つじつまがあう説明を行い、その成立条件(限定条件)は何かを自分で理解しておく必要がある。

 

最後に、帰納法というものは、非常に危ういものであることもわかるはずだ。なぜなら帰納法とは、悪くいえば、自分の都合のいいように解釈をして、その解釈に沿うような結果が得られる実験をすればよいからだ。

もっとひどいのになると、自分の都合のいい解釈になるように、ばらつきあるデータから都合のいいデータだけをグラフにプロットする人間もいる。これはいうまでもなくデータ不正(捏造・改ざん)である。

研究開発者は、帰納法でデータを過不足なく説明することが日常的にあるだろうが、それを妄信せず(妄信することを確証バイアスの罠と言われる)、きちんと実験し、出てきたデータを正しく分析するように心がける必要があるだろう。