昨今はIOTといって、IT(センサーとロガ―と処理ソフト)と工作機械やラインなどが結びついていて、製品の精度UPや不具合診断・不良診断を製品製作時に行おうとしている時代である。実際の量産現場を知らない人間であれば、時代が進んでおり、すごいハイテクな時代であるので、まさか工作機械や製造ラインの機械そのものが壊れることがあるとは予測もつかないかもしれない。しかし、今現在の時代でも、実際の日本の設計のレベルと量産現場(特に海外)のレベルは非常に低いときも多々ある※。つまり、不良品が大量に発生するということは当たり前にあり、さらには生産設備がバンバン壊れている。よって今回は量産設備が壊れたときの最低限の対処法を記述していく。
※弊社のレベルが著しく低いだけかもしれないとも思っているが、そうでないと期待したい。
量産設備が壊れたとき
量産設備が壊れたときと記述しているが、このプロセスはモノがこわれたときすべてに通じる方法である。本当に詳しく原因調査を行い、対策をするときには主に材料強度学や材料学の知識及び、壊れた機械の構造と仕組みを理解する必要がある。そしてその後、その機械にあった最適な方法で対処することで、同様のことが起こるのを防ぐのである。
しかし、そのような知識がなくても、とりあえず対処したいというときが、特にラインが稼働しているときにはある※1。また、最適な対処など関係なく、なくせばOKという現場もある。個人的には生産現場であれば、なくせばOKでもかろうじて許せるが、設計者がそのスタンスでは永遠に同じようなことを繰り返すと考えている。しかし、現実は無常であり、そのような態度と対応で臨む設計者が弊社には多々存在する。
さて、本文を読んでいる方は上記のようになってほしくないが、本題である最低限なにをすべきかについて入っていこう。
まず、量産設備のあるボルトが破損したとしよう。このとき、一番初めに行うことはボルトを同じボルトにはめ変えてラインを稼働させることである。これで同じ回数前後まではラインが稼働することができるので、その間に原因調査に進む。
次にこの世の中では、設備でも製品でも必ずと言っていいほど図面が存在する。壊れた箇所の図面を引っ張り出して、その図面の強度値を確認する。今回で言えばボルトは既製品が大半だが、どのボルトを使用したのかについて明らかにする必要があるということだ。
そして、壊れた部品の壊れた箇所近辺を硬さ試験という方法で測定する。硬さ試験結果で出てきた値は材料の強度を示しているので、その値と図面を照らし合わせる。
ここで、壊れた箇所、今回で言えばボルトが図面と同じか、または図面と異なるかが明らかになる。
図面と同じであれば、設計が間違っていたことになるので、それ以上の強さのボルトで対処すればよい※2。図面と異なっていた場合、ほとんどの場合は図面指定値より低いときがほとんどであるので、まず、図面指定のものに変更することで対処する※3。
これらの対処を行って、経過をみて破壊していなかったらOKだ。
以上が最低限の対処プロセスである。
※1:一般的な生産現場では、基本的に生産ラインが稼働しているときにラインを止めることは絶対悪であり、どうにかしてラインを稼働させ続けようとする。この時、弊社ではある部品の不良率が6割というときもある。しかし、4割でも部品製作して製品を組んで払い出した方がマシという考え方になる。
※2:とりあえず既製品のボルトであれば、強いのにしてみようとするかという方法と疲労破面解析+強度解析を行い、きちんとボルトを選定する方法がある。工数や技術者の能力によって対処法は異なるが前者が多いような気が・・・現実なんてそんなものである。
※3:正確に言えば、靱性と呼ばれるものも破壊に対して重要な因子であり、強度が高すぎて靱性がない材料を用いていて破壊することもある。
まとめ
まず、ラインを止めないように代わりの部品交換で対処してラインを稼働させる。その隙に壊れた部品が図面と同じかどうかを明らかにする。図面と同じであれば設計ミスであり、適切な強度にする必要があり、図面と異なればまず図面と同じにするために手を打つ。その後、何もなければOK。以上が、モノが壊れたときの最低限の対処法である。