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神戸製鋼の不正について技術的に考えてみた

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現在、神戸製鋼の不正問題が大きく取り上げられている。不正についての基本的な考え方は以下記事で述べたとおりであるが、再度私の考えを一言で述べると、

 

不正を行う人間はカスであるが、残念ながら不正はどこにでもあり、なくならない

 

ということになる。バカは死ななきゃ治らないという言葉があるが、不正する人間は死ななきゃ不正に手を染めることをやめることはないということである。

 

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同時期に発覚した日産自動車の不正も大きな不正であるが、材料メーカである神戸製鋼のほうがはるかに影響範囲が広く、現在も多様な業界に材料をおろしていることが報道されている。

 

そこで、今回は不正についての全体的な考え方ではなく、神戸製鋼について考えていきたい。具体的にはどのような状況では安全側の可能性が高く、どのような状況では危険な可能性が高いのかを技術的に述べていこうと思う。

  

工学(材料)の視点から今回の不正を考察する

この問題において、大前提として不正は悪いということは言うまでもない。また、どのような不正が行われていたのか具体的なことはまだ述べられていないように思う。つまり、強度改ざんという結果のみしか私は知らないので、強度改ざんしたという事実のみで、話を進めていくことにする。

 

まず、強度改ざんをしたということを見て人々が思うのは、その材料が使用されている物(自動車や航空機等)が安全なのか危険なのかという観点だろう。それらについて私自身も現時点で断言はできない(ただし、詳細にどのような不正が行われ、その材料がどのように使用されているのか具体的にわかれば判断できる)。

 

安全側なのか危険側なのかを判断するためには、上記で述べたどのような不正で、どのように製作された製品であるのかがわかるのと同時に、材料の組織と強度についての理解が必要である。専門的な内容を詳しく言うときりがないし、非常に説明が長くなる。よって今回は厳密性を排除する代わりにざっくりわかりやすく説明することにする。

 

材料の強度を決める要因は3つである。それは[材料の組成]と[加工の方法]と[熱処理]である。材料の組成とは、材料の中に入っている成分である。具体例で述べると、包丁などでよくステンレスと言われる材料があるだろう。ステンレスとは鉄とクロムが混ざったものである。つまり8割近くは鉄(正確には鋼)であり、およそ1割以上のクロムが入っているものをステンレスと言っている。ステンレスの利点はさびにくいことであるが、クロムの量が減ることでさびやすくなる。今回の材料の強度とは説明が異なるが、わかりやすくステンレスで組成を変えることの影響を説明した。もちろん、組成が異なることで強度の強弱が発生する。

 

次に加工の方法であるが、材料の素材は丸棒や板状になって出荷される(薄板はトイレットペーパーのようになって出荷されている)。つまり、原材料をそのような形に成形しているということである。このときの、温度、加工するときの力、加工するスピードによって加工硬化と言われる現象に差がでてくる。つまり、加工の方法によって強度に差が出てくるのである。

 

最後に熱処理という工程であるが、字のごとく、金属に熱を加えて処理をする工程である。これによって、強度を調節することが可能である。

その特徴として、熱処理条件が異なると同じ材料でも強度が異なること、また同じ熱処理条件であっても材料の組成が異なると強度が異なることが挙げられる。つまり、材料の組成の影響はもちろん受けるが、熱処理条件によっては同等の強度を得ることができる可能性がある(本当にケースバイケース)。また、加工の影響は熱処理によって除去できる。

 

上記から、必ず危険側になるのは、

 

  1. 材料の組成が異なることによって強度が低く、それをそのまま使用するとき
  2. 製造時の加工の方法によって強度が低く、それをそのまま使用するとき

 

である。それ以外の

  1. 材料の組成が異なることで出荷時の強度は低いが、製品製造時に熱処理を行い、強度を保証するとき
  2. 製造時の加工の方法によって出荷時の強度は低いが、製品製造時に熱処理を行い、強度を保証するとき

 

では、強度が保障され、問題ない可能性が高い。また、この時点で強度に問題がある場合はその製品を製造しているメーカーも捏造していることになるだろう。ただし、より正確に言えば材料の組成の変化によって一発破断試験でOKでも疲労強度は下がる場合もあるので、そこまで調査していて問題ないのかどうかを見極める必要はある。

 

多くの神戸製鋼製の材料を使用している企業が、強度的に問題ないとコメントしていて、なぜそんなことが言えるのかと不思議になっている人が多いだろうが、上記したように自社の製品製造時に熱処理を新たに行っている場合は強度保障が可能なのである(疲労強度までしっかりと試験している場合)。

 

よって、飛行機に使用されているが問題ない、新幹線に使用されているが問題ないと言っている企業は、自社の製品製造時に熱処理を新たに行って強度保障をしているので問題ないと述べていると考察することができる。

 

まとめ

今回は材料に関しての視点から神戸製鋼の不正について考察した。その結果、危険側になるのは、購入した材料ままで使用しているときであり、安全側になるのは、自社製品製作時に熱処理を行い、強度保障しているときであるということを明らかにした。