共謀罪を盛り込んだテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案が可決された。過去3度破棄された案が今回強引に可決されてしまった。共謀罪自体、そしてそれぞれのメリット・デメリットを見てみよう。
共謀罪とは何か
ざっくり法務省のサイトの内容をまとめれば、対象犯罪は
死刑、無期懲役、または4年以上の懲役または禁錮にあたる重大な犯罪
であり、対象になる人は厳格な組織犯罪の要件を満たす人(暴力団構成員、悪徳商法などを行う組織的詐欺構成員等)
と書かれており、特に一般人には被害がないことを大きくアピールしている※1。
メリットは時の権力者に力が集中して、戦前の美しい日本に近づくということなので、自分の立ち位置が既得権を持つ側であれば、大賛成であろう※2。そして安倍首相や日本会議の思惑に一歩近づくので200人以上の国会議員たちもバンザイ三唱しているに違いない。日本会議の説明については簡単に以下で記述しているので参考にしてほしい。
しかし、私は真の一般人であれば、明らかにデメリットの方が大きいと考える。以下にデメリットを記述していく。
※1:堂々と一般人も対象に入ると述べる副大臣が存在することに注意が必要である。
さらに、意見があっちゅうまに変わるのが法務副大臣であり、この国の法務をつかさどる人間であることが、現在の日本の法律を表している。
※2:本当の利点は、ストーカー等、実際に実害を受けてないものの予防に対しては有効であると考えるが、この国は冤罪に対して、補償条件も非常に低い国であるので、安易に捕まえられるようにするのにはデメリットが多いと感じる。
共謀罪のデメリット①:現在の法律のあいまいさ
まず、上記のように国が何と述べていようが、それが信用できるかどうかが問題である。現在の法律は厳格に決まっているのだろうか。とてもじゃないが恣意的に決められる余地が多々あると考える。
例えば、ホリエモンの粉飾決算問題をみれば一目瞭然だろう。ホリエモンはライブドアの粉飾決算時に捕まり、実刑までくらっている。しかし、現在で言えば東芝の巨額粉飾決算、ライブドアと同時期に発覚したカネボウの粉飾決算では、粉飾額で言えばはるかに大きいのに実刑を経営者がくらっていない。
この違いはなんなのだろうか。
金額だろうか。
もちろんそうでないことは明らかだ。
答えは既存勢力を打倒する、逆らうという人に厳しいということだと考える。もちろん、ホリエモンも変に目立ちすぎたので、出る杭を倒された※のだろう。
このように現行の法律の解釈でさえあいまいな国が、今回のように一般人というあいまいな表現を使って説明をしている時点で、信用ができないと判断する必要がある。
うがった見方をするなら、既得権を持った人間が危機感を抱くだけで、犯罪組織に所属しているという名目を作り、一般人でなくなり、調査・逮捕が可能となる。また、冤罪などで訴えるとき、今現在より裁判で勝てなくなるだろう。
※私の勝手な解釈だが、出る杭は打たれる、出過ぎた杭は打たれないというのはほとんどの場合実現できない。多くの場合、出る杭は打たれる、出過ぎた杭は倒されるということになる。
共謀罪のデメリット②:すべてのコミュニケーションの監視が合法化
共謀する・合意があれば逮捕が可能になる。法務省のサイトでは飲酒の席で犯罪の実行について意気投合しても逮捕することはないとあるが、基準が厳格でない。
なぜならば、目が合えば逮捕ができるからだ※。
またまた法務省サイトになるが、共謀罪に対してのQ&Aが存在する。この中でQ4の質問と回答を長くなるが引用する。
Q4 共謀罪が設けられると,通信や室内会話の盗聴,スパイによる情報取得などの捜査権限が拡大され,国民生活が広く監視される社会になってしまうのではないですか。
「組織的な犯罪の共謀罪」には,厳格な要件が付され,例えば,暴力団による組織的な殺傷事犯,悪徳商法のような組織的詐欺事犯,暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯の共謀等,組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為に限り処罰することとされていますので,国民の一般的な社会生活上の行為が本罪に当たることはあり得ません。
また,組織的な犯罪の共謀罪の新設に際して,新たな捜査手段を導入するものではありません。したがって,他の犯罪と同様に,法令により許容された範囲内で捜査を尽くして適正な処罰を実現することで,国民の生命,身体,財産を組織犯罪から保護することとなります。
上記のように国民の盗聴をしない、国民の生命身体財産を保護すると述べているが、うそだと断言しよう。
なぜ断言できるかというと、共謀したという証拠を捏造しない場合に、どうやって共謀したという証拠を集めるのだろうか。それは、あらゆる個人情報から集めて証拠を収集する必要があることは自明の理ではないか。つまり、あやしかったからという理由で個人情報収集がOKになるのである。
また、国は国民のある情報を現在監視している(正確には監視するシステムが出来つつある)。
それが何かというとマイナンバー制度である。あれは国民の金の流れを監視する仕組みである。これからの社会は自分の口座の中身まで国に監視されながら生きてく世の中になるのだ。そして、戦前のように国は徳政令をいつ仕掛けてもおかしくなく、その準備としてこの制度を策定したと個人的には考えている(戦前の徳政令と日本の財政については以下記事参照)。
さて、既得権を持つ権力者の立場になって考えよう。金の流れは法案を通して、明らかにすることができた。
そして、共謀罪で各個人のあらゆる電子データが収集可能になるという、既得権を持つ権力者にとっては完璧な状態に仕上がるのである。
ところで世界では、スノーデン事件と言われる事件が存在する。この事件は米国家安全保障局(NSA)と言われる機関が極秘に大量に個人情報を収集していたことをCIA元職員のエドワード・スノーデン氏が告発した事件である。これは秘密裡に一般人のあらゆる電子情報から、国家反逆的なセリフなどを述べていないか調べるためのものであり、この衝撃の事件は映画化もされている。
このアメリカが秘密裡にやっていたことを日本は堂々と胸を張ってできるようになるということだ。
実際に戦前には、治安維持法という共謀罪に似た法律があり、それによって国を批判するだけで警察に捕まるということが起こっている(半藤一利氏より)。
これからどれだけ恐ろしい世の中になるか、想像がつくだろうか。
そしてこんなすばらしい未来を感じさせることを平然と起こす国を目の当たりにして、ひしひしと日本の衰退が加速しそうな空気を感じるのは私だけだろうか。
※:大林宏法務省刑事局長(当時)の伝説のセリフ。彼は覚醒して神に至った人物であるので、この言葉の意味が一般人と異なるのだろう。ちなみに、これが許される世の中になると、イエスマンゴマすり人間100%の世の中になる。例えば、国家元首に反対しただけで暗殺される某国(2か国あるのは確定)のようになるだろう。
以下はおすすめのスノーデンの本である。共謀罪に興味がある人は読んでおくべき1冊だと思う。